安易に「伸びている、拡大している」は危険!賃貸市場と出生率の話
安易に「伸びている、拡大している」は危険!賃貸市場と出生率の話
どうも、なば屋のモノグサ店長です。
先日お客様に、「不動産業者さんから、このエリアは今伸びている、と言われたからこの物件(投資用分譲)を買おうと思っているんだけど、どう?」という相談を受け、市場調査をしました。
市場的にはその不動産業者の言う通りで、現状は伸びていて良さそうでしたし、物件の間取りも悪くなかったので、「アリ」との返答をしました。
(正確には、節税できる資産があったり相続対策ならアリ、儲けようと思って買うなら微妙、という返答ですが)
こうやって購入前に相談してくれる人はすごくありがたいです。
当店で相談費用なんかを頂くわけでも無いですし、特に相談するハードルは無いかと思いますが、買っちゃって失敗する人もちょくちょく見てきています。
まずは、この記事で私が最も伝えたいことを言いましょう。
不動産業者や建築業者や建築紹介をしたい管理会社の言う
「伸びている・拡大しているエリアだから大丈夫ですよ!」
は、まず疑ってかかりましょう!!
もちろん、本当に良いエリア・物件もあります。
でも、賃貸経営は経営です。石橋を叩いて渡る必要があります。
気軽に手を出して損をするのはナンセンスです。
もちろん、疑いに疑って、考えに考えて、様々な対策を講じて、尚うまくいかないこともあります。
それでも、「言われるまま信じて気軽に手を出して失敗する」のと「考えた上で失敗する」のでは質が違います。
その後に活きる経験も大きく違います。
今回は、皆様が不動産を購入、または建築する際に、
まず疑ってかかれるためのデータ「出生率」についてお伝えします。
出生率について
出生率(しゅっせいりつ・しゅっしょうりつ)とは言ってもいくつか種類があります。
一般的に出生率というと、人口1,000人あたりの出生数を表す「普通出生率」を指すことが多いですが、今回の記事では「合計特殊出生率」についてお話していきます。
合計特殊出生率とは、15~49歳の年齢別出生率を合計したもののことを言い、一人の女性が一生の間に何人産むかの指標になります。(この記事ではこれ以降、合計特殊出生率を出生率と表記します)
ちなみに、昨年出た2019年の出生率は1.36。
つまり、平均して一人の女性が1.36人こどもを産む、という数字が出ました。
この1.36という数字から、何が読み取れるのか次のテーマでお伝えします。
出生率から読み取れること
この出生率1.36という数字は、果たして大きいのでしょうか小さいのでしょうか。
結論から言うと、非常に小さな値となっています。
1.36は確実に人口減少していく数値です。
賃貸経営においても、ターゲット層の人口の話をするときに私もよくお話しすることがあるのですが、実際に試算してみると分かりやすくなります。
人口の変遷について
この出生率1.36を基に、仮に出生率が1.36を維持したまま推移した場合の今後の人口の変遷について簡単に試算してみます。
日本の男女比は、若干女性の方が多いですが、ここでは1:1として計算します。
また日本の人口については、100,000,000人として計算します。
出生率が一人の女性が一生に産むこどもの数ですので、今いる世代の子供の世代についてまず試算してみましょう。
日本の人口 100,000,000(人) × 女性の割合 0.5 = 女性の人数 50,000,000(人)
50,000,000(人) × 出生率 1.36 = 68,000,000(人)
我々のこどもの代の人口は、実に7割以下になります。
さらに、孫の代を考えてみましょう。
人口 68,000,000(人) × 女性の割合 0.5 = 女性の人数 34,000,000(人)
34,000,000(人) × 出生率 1.36 = 46,240,000(人)
なんと、我々の孫の代の人口は半分以下になってしまうのです。
ちなみに、2015年には出生率が1.46となり、メディアには「高水準の出生率」などと取り上げられました。
この1.46で同様の計算をしてみた場合、孫の代の人口は約53.3%となります。
これもとても「高水準」とは言えないですよね。
尚、死亡率も加味していないので、実際にはもう少し低い数字になります。
要するに、この様な出生率の推移をしている限り、賃貸経営においてもターゲットとしている層の人口は年々確実に減っていきますよ、ということです。
過去の出生率は?
せっかくなので、過去の出生率についても触れてみたいと思います。
これまでで、最も出生率が高かった時代はいつ頃か分かりますでしょうか。
ぱっと気付いた方が多いかと思います。
そう、所謂「団塊の世代」の年代です。
昭和22~24年頃が第一次ベビーブームと言われ、団塊の世代の方々の産まれた年代です。
ちなみに当時の出生率は4を超えていて、最大4.32もの数字をたたき出していました。
次の第二次ベビーブーム(所謂段階ジュニア)が昭和46~49年頃。
この頃の出生率は2.1を超える程度の水準でしたが、団塊の世代のこども達ということもあり、200万人を超える出生数でした。
2019年はというと、86万5239人で、1899年の調査開始まで遡って見ても過去最少の出生数となりました。
まとめ
ここまでお伝えしてきた通り、現在の出生率では確実に人口は減少していきます。
当然、住宅の必要数も減っていきます。
エリアや計画によっては、これからもニーズの高まるものもあるでしょうが、最初にお伝えした通り「ここは伸びているから」は安易に受け取らず、やはり疑ってかかる必要があります。
より精度の高い市場調査や、より綿密に練られた経営計画を立てる必要があります。
また別途記事を書こうと思っていますが、2022年頃には団塊の世代が後期高齢者にさしかかることから、国民の負担が高まることが予想される「2022年危機」や、同じく2022年の生産緑地解除なんかも賃貸市場には影響してくるでしょう。
生産緑地については改めて記事でお話ししていきたいとは思っていますが、過去に用途地域の記事でも少しだけ触れていますので、是非そちらもご参照ください。
「用途地域って?正しく知って正しい賃貸計画を! https://nabaya-consulting.com/archives/839 」
また、人口減少していても世帯数が実は増加している、というデータもあります。
こちらは、過去にコロナ関連の記事で触れていますので、こちらもどうぞ。
「コロナ禍でも1K・1Rには影響無し、って本当?居住用不動産投資のこれから https://nabaya-consulting.com/archives/476 」
当店では市場調査も、先を見据えた計画のコンサルティングも無料で行っております。
少しでも迷ったら「どうせタダ」と思って相談してみて下さい。
お力になります。