一戸建てで賃貸経営。メリットとデメリットや注意点を徹底解説!
国土交通省の「土地問題に関する国民の意識調査」によると、今後望ましい住宅形態として「一戸建て」を望む人の割合は年々減少傾向にあり、一見人気が落ちてきているように思われます。
しかし、この調査が始まって以来一貫して、望ましい住宅形態として一戸建てを選んだ割合は54.9%と最も高く、住まいの形態として一戸建ての人気はやはり高い事が伺えます。
(しかも、そもそも一戸建てが現実ではないエリアの多い政令指定都市のアンケート結果が全体の割合を下げている)
※参考:国土交通省 令和2年度「土地問題に関する国民の意識調査」の概要について
https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/content/001408334.pdf
住まいの形態として人気な一戸建てですが、実は賃貸市場においては一戸建ての供給は全体の数%しかなく、入居者の嗜好からすると圧倒的に不足していると言われています。
そんな一戸建てでの賃貸経営について、この記事では、メリット・デメリットや、一戸建てで賃貸経営をする際の注意点などについてお伝えしていきます。
もくじ
戸建賃貸のメリット
通常のアパート・マンションの経営と比べて、一般的に一戸建てで賃貸経営を営む場合のメリットは以下の通りです。
1.スタートするための立地条件が緩い
まずは、立地条件に関してです。
ある程度の利回りを出すために、アパート・マンションの場合ですと、それなりの広さを求められることが多いですが、一戸建ての場合、ミニマムで十数坪という狭小地でも建築することが可能です。
また、アパートとしては使いにくい割り付けの変形土地でも実現する可能性が高く、土地の活用方法として非常に優秀です。
また、立地の場所についても、アパートやマンションよりもハードルが低いのも特徴の一つです。
駅徒歩5分圏や、日常の生活動線の利便性を強く求められる集合住宅に対して、戸建賃貸の場合、例えば駐車場を無料にすることでその問題が解消したり、そもそも少し郊外が求められるケースもあったりと、場所選びの選択肢の範囲が広くなります。
2.入居期間が長い
次に、入居者の入居期間についてです。
戸建賃貸の場合メインとなる入居者層は、ゆっくりと暮らしたい夫婦・子供のいるファミリーなど、比較的長い期間そこに腰を落ち着けようと思っている層がメインになります。
ですので、必然的に入居期間が長く、その分長い間安定して家賃収入が得られる算段が立つというのも大きなメリットの一つです。
一方アパートやマンションの場合、もちろん長く腰を落ち着けたい層もいますが、単身世帯やお子さんのいない世帯が多く、一戸建てと比べるとやはり入居者の入れ替わるペースは早くなります。
3.節税対策になる
これはアパートやマンションも同様ですが、もしあなたが更地をお持ちの場合、更地のまま取っておくよりも税制優遇を受けられます。
具体的には、賃貸として運用することによって、土地の固定資産税は1/6、都市計画税は1/3まで減額されます。
また、減価償却などの経費を所得と合算することで所得税や住民税の節税が出来る場合も多々あります。
お持ちの資産次第ですが、資産組み換えによって評価額を下げることも可能です。
確定申告を青色申告することによって青色申告特別控除を適用することも出来ます。
※参考記事「【確定申告】賃貸経営するなら「青色申告」をしましょう!」
何棟も経営し規模が大きくなった場合は、法人化して法人税の税率を適用することも有効です。
4.相続対策になる
相続「税」対策としては、アパート・マンションと同様に「貸家建付地」として評価されるため、更地と比べて相続税を軽減出来ます。
借入を利用することで財産全体の評価を下げて相続税評価額を下げることも可能です。
これに加え、一戸建ての賃貸は相続財産として非常に優秀なポイントがあります。
相続財産を分割しやすくする、という点です。
アパート・マンションを建てられるような広い土地をお持ちであったとして、相続対策として建築する場合、一戸建てを選択した方が良いケースが多々あります。
法定相続人が複数いる場合で、他に分割する様な資産が無い(もしくは少ない)といったケースがこの典型です。
相続対策の為に建てたはずの賃貸物件が分割しにくいアパート・マンションに比べて、敷地分割を行って複数等建築することが容易な戸建賃貸は、相続の際に揉めにくい相続財産となります。
5.管理の手間が少ない
共用部の清掃や植栽選定、共用灯やセキュリティシステムの管理など、何かと管理に手間のかかるアパート・マンションと比べ、一戸建ての場合管理の手間が少ないこともメリットの一つです。
清掃や除草などは入居者本人がやってくれるケースがほとんどですし、共用灯や共用水栓なんかも存在しません。
自主管理の場合や、集金業務以外の管理を自分で行う様なケースであると、本当にこの手間の部分が賃貸経営における大変な仕事の一つとなってきます。
植栽や清掃等を外注する場合に関しても、その費用が抑えられるのは大きなポイントです。
6.比較的高い利回りが確保しやすい
戸建賃貸は、一般的に利回りの確保しやすい賃貸経営の形態であると言われています。
その理由としては、冒頭にお伝えした通りやはり戸建は住まいとして人気なことと、市場で戸建賃貸に希少価値があることから、アパートやマンションよりも高い賃料を設定しても無理が生じない可能性が高い、ということが最も大きなポイントです。
そもそもの供給量が少ないので、賃料を多少相場より高く設定しても需要は見込めます。
また、中古戸建を購入してリフォーム後貸し出す等、初期費用を抑えた形でスタート出来ることが多いことも、利回りを確保しやすい要因の一つです。
戸建賃貸のデメリット
ここまでは戸建賃貸のメリットについてお伝えしてきましたが、実際に経営するとなるとデメリットもしっかりと理解しておく必要があります。
以下の通りです。
1.空室リスクが大きい
入居者の入居期間が長くなる、というメリットを上でお伝えしましたが、一方で空室リスクが大きくなることが最も大きなデメリットです。
一戸建ての場合、入居率は入っているか入っていないか、つまり100%か0%ということになります。
ひとたび退去が決まれば、その物件の収益は0%になってしまうのです。
また、ファミリー層等がメインのターゲット層となる戸建賃貸は、立地や間取りにもよりますが、時期によって入居者募集に苦労するタイミングが発生します。
運悪く入居者を見つけるのに苦労する時期に退去が決まったりしてしまうと、数か月、場合によっては半年以上収益0円なんていうことも珍しくははありません。
2.収益額が低い
先程戸建賃貸は利回りを確保しやすい、とお伝えしましたが、反面「収益額」全体のことを言うと、アパートやマンションよりも低くなりがちです。
これは単に戸数の問題です。
土地に対して余すことなく住居として収益を生むことを目指せるアパート・マンションに対して、一戸建ての場合は付加価値となるものの収益は生みにくい庭や駐車場等に利用したり、所謂土地の遊びも必要な部分となってきてしまうため、土地面積当たりで生まれる収益額全体は小さくなりがちです。
ただし、アパート・マンションの場合は設備費用等も嵩んでしまうため、利回りは戸建の方が出しやすくなる、ということです。
収益額重視・・・アパート・マンション
利回り重視・・・一戸建て
基本的にはこういったイメージでOKです。
3.リフォーム費用が高くなりがち
アパートやマンションに比べ、退去時原状回復やリフォームの際に対象となる部屋の大きさが大きくなりがちなため、リフォーム費用は高くなりやすいです。
また、入居期間が比較的長いことも、一度の退去時にかかる原状回復費用が高くなる要因の一つです。
原状回復の頻度自体は少なくなりやすいので、計画的に修繕費積み立てをしておくことで、資金繰りとしては寧ろ回しやすくなります。
気を付けておきましょう。
4.サブリース出来ない
戸建賃貸は、その空室リスクが高いという点からサブリースが出来ない、または出来ても条件が悪いということがほとんどです。
サブリースの一棟を丸々借り上げて空室リスクを分散する性質上、致し方ありません。
管理システムについては、こちらも合わせてご参照ください。
※参考記事「集金代行とサブリース?その違いとそれぞれのメリット・デメリット」
一戸建てで賃貸経営をする際の注意点
ここからは一戸建て賃貸経営をする際の注意点についてお話しします。
1.超重要!住宅ローン
まずは超重要なポイントである住宅ローンについてです。
気を付けなければならないのは、住宅ローンで建てた自宅を、転勤などの理由で賃貸に転用するケースです。
住宅ローンは居住の為のローンですので、賃貸物件として、つまり事業用として利用することは出来ないというのが原理原則です。
住宅ローンを全て生産してから賃貸する、又は事業用ローンに借り換えてから賃貸する様にしましょう。
この住宅ローンに関しては、下の記事で詳しく説明しています。合わせてご参照ください。
※参考記事「【不正行為】安易な賃貸又貸しや自宅の貸し出しに要注意!」
2.費用をかけ過ぎない
費用をかけすぎないというのも、経営においては重要なポイントの一つです。
せっかく利益率の上がりやすい戸建賃貸なのに、初期費用をかけ過ぎて利益が出ないなんてことになると本末転倒です。
元管理会社のプロだからこそ言います。
管理会社は、戸建賃貸と言うだけで「やりやすい」「ありがたい」と思っています。
先述した通り、一戸建ては求められていて、戸建賃貸は供給が不足しているのです。
安かろう悪かろうでは良くありませんし、かけた方が良い費用もいっぱいあります。
ですが、変にこだわって費用をかけ過ぎるよりも、可能な限り費用は抑えることを意識してみて下さい。
3.流行り廃りのないものにする
これも空室リスクが高いという点とリンクした注意点なのですが、収益が0か100か、というのが戸建賃貸ですので、流行り廃りのないデザインや間取りにしましょう。
また、新築せっかく建てるからと、お部屋の中でもすごく自分の拘りを入れたがるオーナー様がよくいらっしゃいます。
あなたが住むのではなく、他人が住むのです。
なるべくなら、当たり障りのない、シンプルなものが好ましいです。
(ある程度ニーズが約束されていて、希少性の高いコンセプトであれば、また話は別ですが)
室内の設えについても、入居者の生活動線を第一に考えて上げて下さい。
シンプルな生活動線の住まいは入居期間も長くなりますし、空室期間も短く、経営が上手く回りやすいです。
4.管理会社選び
先述した通り、一戸建てはサブリース管理をしてもらえないことがほとんどです。
ですので必然的に、管理システムは一般管理(集金代行)となることが一般的ですが、言ってみれば一般管理というシステムは管理会社が空室リスクを背負わないシステムです。
だからこそ、誠心誠意、入居者の募集や管理を行ってくれる管理会社を選ぶことが重要です。
管理会社の選び方については、こちらの記事をどうぞ
※参考記事「良い賃貸管理会社を選ぶための大事なポイント,注意点」
もし管理会社選びに迷ったら、当店へお問い合わせ下さい。
一緒に選定も出来ますし、ご紹介も可能です。
まとめ
さて今回は、一戸建てで賃貸経営、という内容についてお伝えしてきましたが、いかがでしたでしょうか。
狭小地や郊外の土地を利用して新築したり、中古物件を購入したり、ご自身の住まいを賃貸に出したりと、戸建賃貸を実現する方法は様々です。
また、期間の決まった転勤などで貸し出す際に「定期借家契約」を選ぶことも出来るため、これも含めてアパート・マンション経営よりもハードルはかなり低いと言えます。
※定期借家契約について → 参考記事「【定借の可能性】定期借家契約のメリット・デメリットと活用法,普通借家との違い」
だからこそ、これから一戸建てで賃貸経営を始める方には、メリット・デメリットや、経営するための注意点をしっかりと理解して経営して頂きたいものです。
また、実際に賃貸経営を行う場合、ケースバイケースで、ここには書ききれない注意点が沢山あります。
少しでも賃貸経営に関することで迷ったら、是非当店なば屋へお問い合わせ下さい。
無料で、あなたの賃貸経営のお力になります。
今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。