アパート経営への融資は?「収益還元評価」と「積算評価」
アパート経営への融資は?「収益還元評価」と「積算評価」
どうも、なば屋のモノグサ店長です。
前回の記事から少し期間が空いてしまいました。すみません。
今回はアパート・マンションや貸家等も含め、賃貸経営を行う為には(通常は)絶対に切り離せない「融資」について少しお話ししたいと思います。
賃貸不動産への評価方法として「収益還元評価(収益還元法)」「積算評価(積算法)」「取引事例評価(取引事例比較法)」の大きく分けて3つがあります。
この内、取引事例評価は、現実に行われた取引を元に不動産の評価を算出する方法ですが、不動産の実際の売買や賃貸では個人的な事情により金額が調整されているケースであったり、その時の時勢等で大きく金額が変わってしまうので補正がかけられます。
金融機関の融資の評価としては収益還元評価と積算評価の2つが主ですが、こういった補正や時点修正のハードルがあってのことかもしれません。
(もちろん、評価を詳細に詰めるために取引事例評価もされているのは間違いありませんが)
今回は金融機関の不動産融資に対する評価の二本柱である、収益還元評価と積算評価についてお伝えします。
融資の評価方法
まずは、それぞれの評価方法について簡単にお伝えします。
収益還元評価(収益還元法)
収益還元評価とは一言で言うと「不動産が将来生み出す見込みである収益に着目して評価する方法」です。
要するにその物件がどれだけ稼ぐことが出来るのかの評価です。
主に不動産業者の売買金額や賃料等の査定や、後述しますが融資の評価にも使われます。
更にこの収益還元法は「直接還元法」と「DCF(ディスカウントキャッシュフロー)法」に分けられますが、ここでは「直接還元法は1年間の収益と還元利回りから見た簡単な評価方法」「DCF法はリスクや将来の価格等を綿密に予測して現在の価値に換算する評価方法(※)」とだけ覚えてくれればOKです。
(※)例えば「10年後の10,000円は今の価値で言うと9,000円くらいだろう」と考える感じです。
不動産業界においては、比較的算出方法が簡便なことと、内容も分かりやすいことから「直接還元法」の方がポピュラーです。
積算評価(積算法)
積算法とは簡単に言うと「不動産の鑑定評価方式の原価方式において新規賃料を定める手法の一つ」です。
積算賃料を定める基礎となる賃料を定め、期待値利回りや必要経費等を加味して評価されます。
ここまで敢えて分けて来ませんでしたが、金融機関の融資の評価方法としての「積算評価」とはちょっと違っていますので、今回の記事では触れるだけに留めます。
融資のための評価としての積算評価(原価法)
金融機関の融資のための評価としての積算評価は一言で言うと「その不動産の価格に安全割合を乗じて算出する評価方法」です。
不動産の価格の目安は、土地であれば路線価価格、建物は再調達価格に法定耐用年数の残存年数の割合を乗じた価格、となります。
要するに「債務不履行の担保としたとき実際いくらになるの?」という評価です。
積算評価の価格は市場に影響を受ける部分が多く、都心に近づくほど、その不動産の実際の価格よりも大きく低くなる傾向があります。
分かりやすいところでご説明すると土地の実勢価格と路線価価格の差です。
目安としてあくまで参考にはなりますが、路線価価格は実勢価格のよりも一定割合低くなります。
土地の価格の高い都心部程その差は大きくなり、実際にかかる費用よりも低い評価が出るのです。
金融機関はどの様に評価する?
ここからは、実際に賃貸不動産の融資相談を数々行ってきた体験をベースにした私の主観からお話しします。
結論から言うと、
金融機関は積算評価で担保評価を定めることがほとんど
と言っていいかと思います。
元も子もないことを言ってしまうと、銀行や信金も商売ですし、「担保評価は、何かあった際に実際に100%ペイ出来る評価しか下さない」というのが本音なのではないでしょうか。
また、アパートローン自体その商品性質上「資産家のための商品」であり、資産家に節税等のメリットを提示し金融機関が儲けるための仕組みです。
過去、金融機関の担当者に直接それを言われたこともあります。
ちょっと悲しくなりますね。
経営なので当たり前ですが、実際の賃貸経営においては重要なのは収益還元で見ることだと思います。
収益性から見る評価なので、当然市場の活発な都心部の方が優秀な傾向が高いです。一方積算評価は前述した通り都市部の方が出にくい傾向があるので、優秀な賃貸不動産を持つためのハードルが上がってしまうわけですね。
地方であれば収益還元評価よりも積算評価が高いケースも増えてきます。それが優秀な賃貸経営の計画だとは全く思えませんが。
ただし、諦めるのはちょっと早いです。
金融機関は積算評価でみることが「ほとんど」とお伝えしましたが、収益還元評価で見てもらえるケースももちろんあります。
例えば
①金融機関による
相談に行く金融機関が数少ない収益還元評価で見る金融機関であるケースです。ノンバンクや地方銀行で収益還元評価を採用していることがあります。
ただし、地銀や信金でもやはりほとんどは積算評価のみで評価すると思ってもらった方が無難かと感じています。金利の高いノンバンクだと収益還元評価をしてくれますが、高金利で賃貸経営をするメリットはありません。
②もともと資産家である
これはアパートローンが「資産家向けの商品である」というという所にも繋がってしまって少し悲しいのですが、その人の資産が潤沢であれば「焦げ付くリスクが低い」という観点から、積算評価よりも高い金額の融資を組んでくれるケースがあります。
③取引実績による
その金融機関との取引実績(これまでの事業用ローンの返済実績や、アパート経営の実績等)を加味して、積算評価よりも収益還元評価を見て融資を組んでくれるケースがあります。
④担当者の進め方による
融資の審査は実は担当者の進め方による部分が大きいです。「収益は良いのだし、何とかして融資をつけてあげたい!」と本気で考えてくれる担当者は、審査の進め方もしっかり考えてくれます。(姿勢や意気込みだけではダメですが・・・)
「どう審査を進めれば評価を高くつけられて計画を進められるか」という知識や経験がしっかりあって、熱心に考えてくれる担当者に当たることで、可能性が広がります。
この「担当者による」というケースが意外と重要で、私の主観ですが確信を持って言えることは、「銀行の担当者に当たり外れはある!」ということです。
・どう見ても担当者の進め方がまずくて計画が進められなかったケース
・なかなか厳しい計画だけど担当者が優秀で実行できたケース
どちらも経験してきました。
まとめ
簡単にはなりますがまとめます。
<金融機関の融資基準>
積算評価
・担保として実際に確実にペイ出来る安全圏の評価
・都市部ほど低くなりやすい
収益還元評価
・その不動産の収益性から見る評価
・この評価が高いほど賃貸不動産として優秀
重ねてお伝えしますが、賃貸不動産として優秀なほど収益還元評価が高く、また積算評価は実際のかかった価格よりも低くなりがちです。
そんな優秀な賃貸経営計画を実現するためには、残念ながら金融機関の優秀な担当者に当たることが必要不可欠であると私は考えています。
金融機関の担当者のご紹介や、金融機関との交渉の仕方等、私のお力になれるケースもあるかと思います。
融資にお悩みでしたら、ダメ元で一度ご相談ください。
また、融資に関して収益還元評価を採用する場合、サブリースが前提となることがほとんどです。
(私の見てきた範囲では、全てサブリースが前提だったかと思います)
サブリースを含め賃貸管理の会社や内容にお悩みの場合も、当店にお問い合わせください。
無料でアドバイス・コンサル・ご紹介を致します。
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